しょうこのリスニング・ダイアリイ!
W・A・モーツァルト
『10曲のソナタと幻想曲』
フリードリヒ・グルダ/ピアノ
クラシックでカセットテープをマスターにしてる作品なんて初めて。その身軽さは「クラシック音楽業界にこれ以上関わりたくな」いためにジャズに転身した、というこの人にいかにも相応しい気がする。カセット好きとしては「気が合った」みたいで何だか嬉しい(「音楽業界にこれ以上。。。」というところも。。。ナーンテ、言わぬが花ですネ!)。
リリー(・クラウス)女王の清麗典雅なモーツァルトとも、GG(グレン・グールド)の時間を疾走させるようなモーツァルトともちがう。生きる喜びと強さに溢れて、とれたての大きな果物みたいに瑞々しく美しい。
カセットテープの音というのは記憶のいちばん奥の場所にわたしを誘う。子供の頃に聞いた音。生まれる前に聞いていた音。記憶から聞こえてくる音の記憶。
そこに在るのは捉え難い詩的ななにか、何者にも縛られず自由で、瞬間瞬間にあたらしく生まれてくるものなのだ。
グルダのモーツァルト/ピアノ・ソナタ集はカセット・テープに録音されたコピーしか残っていない。しかも生前は人の耳に触れてもいない。「オリジナル・マスターは見つからなかったが、演奏の素晴らしさは音質のいかなる疵をも補ってあまりあると信じている。」と製作者のコメントがある。
いいえ、カセットでしか残っていないのは疵なんかじゃなく、神様とアマデさんの粋なはからいだと心から信じられる。だからこそこんなにも詩と生命に溢れた瑞々しいーーアマデさんそのものじゃないかーー演奏と録音がこの世に残ったのだと。そう、録音をするということのほんとうの意味を、グルダのモーツァルトは私に教えてくれる。
死んだらばら色の雲の上で、モーツァルトと四手連弾をすることが出来るのなら何も望まないーー生前グルダはそう言ったそうだ。
夕暮れのばら色の雲に乗って、きっとふたりは連弾をしているだろう。音楽がこの世にあることは素晴らしい。何だか泣きたいくらいそう思った。
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