アマデさんの手紙を読んで。
あなたという自我、あなたという生理と官能、あなたという存在の最深部は「音」で出来ている。あなたには思考というものが無い。信じられている意味での「思考」を、あなたはまったくしていない。
思考は存在を、自我の混沌から守るためのものである。言葉に光を当て、それに意味を付与し整理するものでもある。あなたと来た日には思考を、自分を守るものをなにひとつ持たず裸形のままで、音の上に、音の真ん中に垂直に立ち尽くしている。
あなたの存在、あなたの生理と官能、あなたの自我はその最深部まで音に乗っ取られている。あなたは音、音はあなただ。思考というものはその間に余計な雑音を持ち込む。あなたはそんなものを必要としなかった。それどころか持って生まれてさえ来なかった。あなたの音がこんなにも自然に「奔流のように」流れ出るのはそのためだ。あなたの世界では命の光と死の闇が、命の闇と死の光がひとつになってポリフォニーを描く。
それは恐ろしいことだ、あまりに怖いことだ。すべての思考に見離され、最深部まで音に乗っ取られた人間がこの世で生きていられる筈が無い。あなたの35年と10ヶ月と9日間は奇跡だ。早逝(はや)過ぎたのでは無い、あなたが音に生まれ音に生きたのは、それは奇跡だ。
「神がザルツブルクに生まれさせ給うた奇跡」ー。あなたの父親はこれ以上無いほどただしい言葉であなたを表現した。ただその言葉のほんとうの中身を、理解していなかっただけである。
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